2023年ミャンマーのパスポート問題について(2023年3月24日時点)

はじめに

2023年1月中旬、急遽ミャンマー国内のパスポート発給が一時休止の状態となりました。

本記事は外国人採用を検討している企業、中小企業、介護・外食産業の方向けに、ミャンマーのパスポート一次発給停止の問題の概要や、その影響について解説します。

2023年1月に制限が発令されたことから、国内の出国を検討しているミャンマー人だけでなく、受入企業を検討している方も不安を感じているかもしれません。

本記事を通じて、問題解決の1つとなれば幸いです。

ミャンマーのパスポート問題とは?

2023年1月、ミャンマー政府は急遽、パスポート発行を制限する方針を発表しました。これにより、ミャンマー国民は、海外旅行や在留資格更新が困難になるとされています。

制限内容としては、まず最も影響が大きいのが、新規パスポート発行の制限です。

新規発行が制限されることで、ミャンマー国民が海外旅行や出張、留学などで必要とされるパスポートを取得することができなくなるという問題が生じています。

日本における影響範囲としては、介護・外食産業、農業など、ミャンマー国内から日本へ受け入れをする企業にとって、入国時期がずれ、採用計画が立てにくくなるなど、影響を受ける可能性が考えられます。

2021年の政変後より、国内での就労機会の減少から、国外就職(出稼ぎ)を希望する若い人が増えています。

そのため、パスポート申請をしたい人が絶えず、パスポートセンターには連日行列ができます。1日中申請のために並びます。

政府にとっては、国外へ出稼ぎ労働者が増えるほど、そのための税金やミャンマーへの送金等により政府の収入につながることもあり、海外就労を促進している面もあります。

一方、政府側は国外で民主活動をする人を制限するべく、出国の規制も同時に行っている傾向があります。

パスポート申請者数増加により、パスポートセンターは対応しきれず、1日の発行数を制限しています。そのため、早くパスポートを得たい人は、予約券を発行している(闇)業者へ大金を払って申請する人もいます。

2023年1月時点は、裏ルートと言われる闇業者での申請もできなくなり、大混乱となりました。

介護・外食産業への影響

介護施設や外食産業では、現在ミャンマー国内から日本へ受け入れを検討している企業が多くなっています。しかし、パスポート発行ができない問題が起こり、受け入れ時期にずれが生じる可能性もあります。

介護施設や外食産業が必要とする人材が確保できない場合、サービスの質の低下や業務の拡大ができないという問題が生じることがあります。

そのため、ミャンマー人を受け入れる企業にとって、ミャンマー国内で生じているパスポート発給停止の問題は、採用計画を立てる上でとても重要な問題になっています。

2023年3月時点のパスポート発行状況

2月末頃に、パスポート発給が再開され、国外就労を望むミャンマー人の多くの人が、パスポート申請の申し込みを行いました。

(しかし、実際には再開早々、システムエラーのため再度停止しました)

現状も、全員が申請できる状況ではなく、申請日を予約する必要があります。

ヤンゴンのパスポートオフィスは再開しているものの、申請予約が取れない状態が続いています。その予約を取るために、真夜中から申請を行い、予約枠を取ります。

しかし、3月20日頃から、ネピドーやモーラミャインなど地方のパスポートオフィスが先に再開し、地方の方でパスポートを取得するミャンマー人が増え始めていると聞きます。

ミャンマーにおけるパスポート申請の手段

パスポート発給停止後、様々な方法で申請をする手段が増えました。

①個人で申請・取得(ヤンゴンor地方パスポートセンターにて)
→従来のやり方通り、個人で申請をする方法
この方法が今は最も取得がしやすいが、1ヶ月以上先になることもあります。

②GreenChanel
→労働者送り出し協会経由の申請方法。しかし、現在は機能していません。

③裏ルートと言われる方法
→以前同様、闇ルートでの発行業者が出てきました。正規の方法とは異なり、高額な金額を支払い、パスポート申請を行う方法。(偽造パスポートの発行等、詐欺目的の人も多い傾向です)

今後の見通し

そもそも、パスポート発給停止の理由としては、公式発表以外にも様々な憶測が飛び交いました。

・パスポートの印刷用紙が足りない
・不正業者の摘発
・海外出稼ぎ労働者からの寄付により民主活動家を支援している(政府にとっては不利益)

など様々な憶測がされています。

今後の見通しとしては、徐々にパスポート申請予約の再開が始まり、申請が開始されると推測されます。

しかし、現状では不透明な状況が続いているため、ミャンマー人労働者の採用や在留資格更新において、不確定要素もゼロではありません。

このような状況において、企業や業種によっては、ミャンマーからの技能実習・特定技能を採用しにくくなる、ということも考えられます。

ですので、今後ミャンマー人採用を検討される場合は、採用段階で

・パスポート(PJタイプ)を持っていること
・パスポート申請の予約をしていること
・採用〜出国まで6ヶ月ほどの期間を余裕持って採用計画を立てること

などが必要とされます。

海外から労働者を受け入れる場合、パスポートだけでなく、様々な書類申請や審査が存在します。計画段階で余裕を持ったスケジュールが大切と言えます。

また、パスポート申請含め、書類申請や審査はミャンマー現地の送り出し機関への委託や協力体制の構築が、入国した労働者の離職を防ぎ、長く働き続けるための仕組みづくりの面からも必要だと考えられます。