ミャンマーは、180以上の民族や仏教をはじめ、イスラム教・キリスト教などの宗教が共存する国で、長い歴史と豊かな文化が特徴です。
ミャンマーでビジネスをする際には、ミャンマーの歴史的文化やその背景にある価値観を理解することが大切だと、ここ数年間ミャンマーで仕事をしていて感じます。
ミャンマーには、様々な伝統行事があり、その中でも10月頃に行われる仏教の伝統行事である「ダディンジュ」は特に有名です。
ダディンジュは、お釈迦様が黄泉の国で天神様達に説教を伝えた後に地上に戻る日とされています。
ダディンジュには慈善活動も含まれており、貧しい人々に食べ物や物品を贈るなど、社会的な役割も持ち合わせています。
1、ダディンジュの歴史と意義
<ダディンジュの起源と歴史>
ダディンジュは、ミャンマーの仏教の歴史において、古くから行われている歴史があります。ダディンジュの起源については諸説ありますが、仏教の経典に登場する「マハ・ダーナ」の一つである「シュワン・ダンザ」が元となっていると言われています。
また、かつてのミャンマーでは、王族や官僚たちがダディンジュを行うことで、豊作や平和を祈願していたとされています。
ダディンジュが持つ意義は、仏教の教えを広めることや貧しい人への社会貢献、そして伝統文化の継承にあります。
行事に参加する人々は、仏教の教えに基づいた慈善活動を行い、貧しい人に食べ物などを寄付したり、お寺へ寄付をします。
また、ダディンジュを行うことは、期間中に実家に戻るなど、地域社会との結びつきを強め、お互いに助け合うことが大切であることを再認識する機会ともなっています。
2、ダディンジュとビジネス
ダディンジュは、現地の日系企業にとっても重要なイベントであり、様々な影響やさらにビジネスを発展していくための機会の1つともなっています。
ダディンジュの1つの文化の中に、年配から若者に対して、お小遣いを上げる文化や、お世話になった人へ贈り物をする習慣があります。日本で言うと、お年玉やお中元のような意味合いです。
そのため、ダディンジュ連休の前に、企業側から社員へ、ボーナスや福利厚生としてお小遣いを上げることもあります。
そういった取り組みをすることで、ミャンマーの従業員から企業・経営者への信頼を得ることができます。
また、贈り物を送る習慣もあるので、お世話になっている提携先企業やビジネスパートナー、顧客に対して伝統的な贈り物をする会社もあります。
そういった贈り物を通して、コミュニケーションを円滑にしたり、ビジネス機会を得ることもでき様々なビジネスチャンスに繋がります。
ダディンジュ期間中に行われる慈善活動に参加することで、企業の社会貢献活動としての取り組みも期待されます。
さらに、ダディンジュはミャンマー文化の象徴的な行事であり、ビジネスマンにとってはミャンマー文化に対する理解を深める機会でもあります。ミャンマーの文化や伝統に精通していることは、現地ビジネスでの信頼や関係構築につながります。
一方で、ダディンジュ期間中は顧客や提携先、工場などがお休みになることもありますので、日本を含めたグローバル企業には、連休で稼働しないことを事前に伝えたり、スケジュールの調整に余裕をもって対応する必要があります。
以上のように、ダディンジュはミャンマーに駐在するビジネスマンにとっても重要な行事であり、適切な対応をすることで、ビジネスチャンスや信頼関係の構築などの恩恵を受けることができます。
3、ミャンマーの文化とビジネスの関係
ミャンマーには、仏教文化が今でも深く根付いており、仏教の伝統や風習が商習慣の中にも影響しています。
ミャンマーのビジネスは、文化的な背景や倫理観、社会的な関係性が非常に重要です。ミャンマーでは、ビジネスの成功は人間関係や社会的地位に大きく影響されると言われています。
人材採用や、信頼できるビジネスパートナーも、人脈やコネがとても重要です。
また、ビジネスにおいては、相手方に対する敬意や信頼、礼儀正しさが重視されます。相手に対して敬意を払い、適切なビジネスマナーを守ることは日本とも似ていますね。
ミャンマーでも相手への敬意や信頼をとても重要視します。
また、ミャンマーのビジネスは、家族や友人関係によって影響を受けることも少なくありません。家族や友人に対する責任感が強く、ビジネスにおいても家族や友人に利益をもたらすことが求められます。
例えば、経理に関することは、会社の経営者の親族や兄弟に任せる、大きな取引は親族を中心に依頼をする、など、
商品やサービスのクオリティよりも、「人間関係」を重視します。
商品・サービスのクオリティが低くても、親族の会社に依頼したり、信頼できる友人に依頼し、親族・友人に利益をもたらすことが大事と言う考えがあります。(人によっては、紹介料をこっそり手に入れる人もいるので要注意です・・・・)
これらの文化的な背景を理解することが、ビジネスでの成功につながる重要な要素となります。
さらに、ビジネスにおいては、ミャンマーの歴史的背景や政治的な状況、社会的な問題など、社会的な要因も重要です。
2021年の政変以降、国軍派vs民主派と言う二項対立が目立つようになりました。国軍系である、という発言をすれば、民主派からバッシングを受け、反国軍というスタンスを明確にすれば国家反逆罪として逮捕されることもあります。
ビジネスの面では、中立を保つことが大事とされますが、中立であることもビジネスの弊害になることもあります。
現在は、軍事政権の政府や自治体との関わりを持ちたくなくても、関係せざるを得ない状況ですので、関係性や法律、規制なども考慮しながらうまくやっていく必要があります。
以上のように、ミャンマーのビジネスにおいては、文化的な背景や社会的な要因が大きな影響力を持っています。ミャンマーの文化を理解し、その土地ならではのビジネス戦略を展開することが、現在のミャンマー情勢下で求められる1つのスキルとなると考えられます。
4、ダディンジュのお祭りでろうそくを灯す意味は「内観」
ダディンジュは、各地区で3日から10日程度行われます。仏教僧侶によるお経の読誦や慈善活動が行われます。
自宅でろうそくを灯したり、ベランダをライトアップしてお釈迦様をお迎えします。
ライトアップやロウソクで明かりを灯すのには理由があります。
ダディンジュの満月の前後3日間はお釈迦様が黄泉の国で天神様達に説教を伝えた後に地上に戻る日とされています。
満月の夜は、お釈迦様が天から舞い戻る際に地上がよく見えるように、家の玄関先やベランダにろうそくや提灯などで火を灯してお釈迦様をお迎えするのです。
ベランダからは家にライトやロウソクを飾っているお家がたくさん見られます。
実は、ロウソクで明かりを灯すのにはもう1つ理由があります。ロウソクの火によって影が見えます。
そうすると、ロウソクの影が本当の人間に変わってくるように見えます。影が映るということは、周りに自分の心が映っていくということ。ロウソクの影によって、誰かに声かけられるように2人になります。
実はこの2人というのは、「自分と、自分の影」です。
いつもは「自分」しか見えないけれど、ロウソクを灯すことで「自分の影」も映るようになりますね。その影が自分に語りかけるように、映ります。自分の影を見るという「内観」ということです。仏教の教えの中には自分を見つめることも大事にされています。
普段、人に尽くしたり、時間に追われて、自分を犠牲にしたり、あまり自分を見ることは現代社会において少なくなっています。
満月という一つの区切りの季節において、ロウソクの火を灯して「自分の影(=自分の内面)」と会話する良い機会です。
5、ミャンマーの文化を知ることがビジネスで役立つ理由まとめ
ミャンマーに限らず、海外でビジネスを展開していくためには、ミャンマー文化を理解することが、ビジネス繁栄のために欠かせない要素です。
ダディンジュは、ミャンマー文化の一つであり、ビジネスマンがミャンマー文化を知る良いきっかけとなります。
ダディンジュが示すように、ミャンマー文化は仏教的な価値観を持ち、宗教と密接に関わりながらも、豊かな心や文化を発展させてきました。
ミャンマー文化を理解することで、ビジネスマンは、現地の会社でミャンマー人従業員とビジネスのやり方やコミュニケーション方法を改善し、従業員との関係性を構築することができます。
これは、ミャンマー文化を尊重し、ビジネスにおける文化的なギャップを埋めるために必要なことです。ダディンジュを通じて、ミャンマー人が普段大事にしていることや、企業に対して求めていることなど触れることができるかもしれません。
そういったお互いの理解が、ビジネスの継続において大事になっていくのではないでしょうか。