【ミャンマー人材】理想と現実が行き来する技能実習制度について

今週は、企業面接何件かと、新しい実習生の試験などを行いました。実習生にとっても、雇用する企業にとっても、大きな投資となります。両者ともに、意見や勘違い等もあり、日々、とても勉強になります。
制度そのものが、理想と現実の乖離があったり、人権侵害などマイナスイメージが強く取り上げられたり、
政府の掲げる理想と、民間企業の現実、
世間でイメージされる制度と実際の活用事例、
など、大きくイメージの差が出ているとつくづく感じています

今回の記事では、物議を醸し出す理由と今後の課題などを解説します。

物議を醸し出す理由と課題

前回は、技能実習について紹介しました。

ニュースでも取り上げられるように、技能実習制度を巡って、様々な課題もあります。

「年間失踪者数1万人」
「契約外労働」
「違法労働」
「3Kの職場で条件も悪い」など。

さらに外国人が増えると治安も悪くなる、など日本にとって、「移民」自体のイメージがよくありません。

「技能実習制度」自体が大きく問題視されるのは
政府が定める理想と民間企業の現実、の
「建前と本音」のような部分があるためです。

そもそも、技能実習制度は、途上国の経済発展に貢献するための日本の制度であり、
受け入れ年数、人数、職種に制限を設けられています。

人材不足で悩む日本にたくさんの外国人材が送られるというイメージがありますが、制度の規制や運用は煩雑で審査も厳しく、途上国で応募した人が全員が行けるわけではありません。

実は、簡単な制度ではなく、適正に運用されれば、
不正や搾取などなく、日本・送り出し国、両者にとって国益につながる制度です。

しかし、それでもトラブルやマイナスイメージの絶えることはありません。

技能実習制度に関わる問題は、

・制度自体の問題
・日本の監理団体の問題(外国人の受け入れをする組合組織)
・母国側の送り出し機関の問題
・受け入れ企業側の問題
・技能実習生の問題

それぞれのセクターで存在します。

制度自体だけが悪いのではなく、その制度を悪用しようとする各組織、各個人の問題が重なることで失踪など、の最悪の事態に繋がります。

それぞれの組織・機関による課題などをまとめました。

制度自体の問題

「国際貢献」を掲げている制度ですが、実態は、人材不足に対応するための国策となっています。

以前は、「実習生」という名の下、労働基準法の対象外となっていたこともあり、奴隷のように制度を利用する民間企業もありました。

*今は、労働基準法の対象となっています。

また、実習生という制度のため、原則転職ができない、など人権侵害に当たる、という面も存在します。

今は、転職ができる「特定技能」という新しい制度や、
人権侵害を通報できる24時間窓口などの設置など改善に向かっている傾向はあります。

日本の監理団体の問題(外国人の受け入れをする組合組織)

企業に配属される実習生のフォローや、受け入れまでの手続きなどを行う組織です。

技能実習制度は、企業へ直接就職するのではなく、必ず「監理団体」を通らなければ企業も採用できず、実習生も就職はできません。

本来は、実習生のフォローをするという役割がありますが、

高額な仲介手数料(管理費)だけ受け取って何もサポートしない、など悪質な監理団体もあります。

担当によって質は異なるので企業にとっても、どの監理団体とパートナーになるか見極めが必要です。

母国側の送り出し機関の問題

ミャンマーの場合、最大2800ドルを送り出し機関に実習生側が支払いを行い、
日本に行くためのトレーニングを送り出し機関で行います。

日本語、技能、生活習慣など。

悪質な送り出し機関の場合は、そういったトレーニングを行うことなく、日本に送り出し、日本の受け入れ企業側で実習生も、企業も、困り果てる、というケースもあります。

企業との面接の際に、実習生の履歴書を偽造したり(経歴を高く見積もったり)、
手数料だけもらってトレーニングを行なわなかったり。(低レベルであることも。)

ミャンマー人にとって2800ドルは簡単な金額では決してなく、ほとんどの場合は、借金をして支払いをします。他の途上国も同様です。

送り出し機関と、監理団体がグルとなって、実習生を騙す、というケースもあります。

渡日する前だけでなく、渡日してからも、実習生のサポートを行わず、失踪させるケースもあります。

受け入れ企業側の問題

失踪や、実習生の悩みのほとんどは受け入れ企業側の体制にあります。

企業文化になれない、
賃金不払い、
契約外労働、
十分な教育ができない、

など。

しかし、これは技能実習生に対してだけでなく、日本人労働者に対しても同様です。

受け入れ企業側の問題は、

”外国人だから”というよりも、日本人にとっても課題であることがほとんどです。

(もちろん言語・文化の壁は対日本人よりも難しい面はありますが)

送り出し機関や監理団体としては、受け入れ企業側がどんな企業であるのか、を知った上で実習生を募集する必要があります。

今は、実習生の母国である途上国も賃金や労働環境が上がってきているので

「日本で人が集まらない仕事を、外国人は安くやってくれる」
という時代ではありません。

ですので、今後も日本人、外国人関わらず人材を雇用していく予定があるのであれば、人材を惹きつける努力や理解は企業にも求められています。

技能実習生の問題

送り出し機関や、日本の管理団体、日本の受け入れ企業がどんなに良い組織であっても、技能実習生に問題がある場合も残念ながら存在します。
そもそも渡日目的が失踪するためであったり、途中帰国をしてしまったり、ただ稼ぐためで日本語や仕事の習得をする意欲がなかったり。

実際に渡日前トレーニングをしていてもそういった実習生はゼロではありません。

問題ありの実習生を減らすためにも、マインドセットや、日本語会話、生活習慣、などの教育に力を入れる必要があります。

日本でいうと、新入社員教育と同様ですね。

実習生にとっても、

「2800ドルを支払えば日本に行ける」

というマインドではなく、自己成長のための「投資」として考えるように
実習生に関わる監理団体・送り出し機関・受け入れ企業がそれぞれ向き合っていく必要もあります。

日本企業にとっての技能実習

本来の制度の目的は、

「途上国に対する技能移転と国際貢献」

ですが、

企業にとっては、

「人材が欲しい」

という目的があります。

切実に人材不足に悩む企業にとって国際貢献せよ、というのも少し無理がある気もします・・・

本音と建前が異なるのがこの制度の大きな問題点ですが、
その溝を埋めるように、「労働」に特化した特定技能という新しい制度もあります。

技能実習よりも、特定技能の方が条件が良いので人気です。
(職種が限られたり、特定の試験もあります)

日本人が転職をするような感覚で、特定技能の対象職種の中で転職をすることができる制度です。

特定技能制度に関しては、別途、触れたいと思います。

一部の日本企業では、違法労働や、契約外労働があるのも事実ですが、
ほとんどの企業は、

・日本人でも人材が集まらない
・雇用ができなければビジネスの存続は難しい
・代々続いていた工場を廃業するかもしれない

など、切実に、人材雇用に悩む企業がほとんどです。

また、技能実習を採用する場合、企業側の負担も大きくなっています。

・実習生の渡航費
・監理団体への管理費
・送り出し機関への管理費
・入国後の研修費
(2ヵ月間は就労せず実習生へ日本語、生活など基本的な講習があります。その間働いていなくても、賃金支払い義務あり)
・各種保険
・寮生活費用

など、実習生一人を採用するにも100万円を超えるケースもあります。

企業にとっても、ただ安く雇えるから外国人、という考えよりも、人材不足に悩んだ際の人材採用の1つの手段、としての技能実習制度です。

正直のところ、日本人の採用ができるのであれば国内で採用をした方がコストも低くすみそうですね・・

それでも、技能実習生を採用したいのは、

・人材が集まらない
・基本的に3年間辞めることなく働き続ける制度
(新人教育にお金をかけなくて良い)

といったメリットを享受できるためです。

実習生にとっても、受け入れ企業にとっても理想的な形で運用されるためにも、制度・監理団体・送り出し機関それぞれが良い環境を作る努力はし続ける必要があります。